録音した音声を再生すると、「声がこもって聞き取りにくい」「全体的にモコモコして明瞭さがない」と感じることがあります。会議やインタビュー、動画収録、ナレーションなど、さまざまな場面でこのような音質の問題は発生しがちです。
本記事では、くぐもった音声をクリアに補正し、聞き取りやすく改善できるアプリやオンラインツールをご紹介します。初心者向けのシンプルなものから、プロ向けの高機能ソフトまで、用途に応じて選べるツールを厳選しました。
こもった音・くぐもった音声とは?
「こもった音」や「くぐもった声」とは、音声がはっきりと聞こえず、聞き取りづらい状態を指します。具体的には、音がくぐもって響いたり、声に明瞭さが欠けていたりするような状態です。こうした音声は、録音環境や使用機材、話し方など、さまざまな要因によって引き起こされます。
音質の改善を考える前に、まず「こもった音」の特徴を理解することが大切です。主な特徴としては、次のような点が挙げられます:
- 高音域の不足による明瞭度の低下
- 中〜低音域の過度な強調
- 全体的に「モコモコ」としたこもり感
- 言葉の区切りが不明瞭になる
なぜ音がこもるのか?よくある原因をチェック!
こもった音が発生する原因はいくつかあり、録音環境や使用機材によって異なります。こもった音をクリアにするためには、まず原因を理解することが大切です。
環境的要因
- 部屋の音響特性: 小さな部屋や家具が少ない空間では音が反射し、残響が増えることでこもった音になりやすい
- 背景ノイズ:エアコンやパソコンのファン音などが混ざることで音質が劣化
- 壁や障害物: マイクと音源の間に障害物があると、音が遮られてこもりやすくなる
機材的要因
- マイクの質と位置:低品質なマイクや不適切な位置でのレコーディング
- 録音レベルの設定ミス: 入力レベルが低すぎるとノイズが目立ち、高すぎると歪みが生じる
- フィルター不足:適切なポップガードやフィルターの欠如
ポスト処理の問題
- 圧縮による劣化:過度な音声圧縮によって高周波成分が失われる
- 不適切なエフェクト:過剰なリバーブやエコーの使用
こもった・くぐもった音声をクリアにするおすすめのアプリ&サイト
音質改善のためのツールは数多く存在しますが、用途や技術レベルによって最適なものが異なります。ここでは、こもった音をクリアにするための厳選したアプリとサイトをご紹介します。
プロ向け高機能DAWで音声を補正「Ardour」

Ardourは、音声編集やミキシングに特化したプロフェッショナル向けのデジタル・オーディオ・ワークステーション(DAW)です。こもった音声をクリアにするには、ArdourでパラメトリックEQを活用し、300〜500Hz付近の帯域を適度にカット、さらに2kHz以上の帯域をブーストすることで、音の明瞭度を向上させることが可能です。
- 長所
- 短所
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- 多機能で高度な音声編集が可能
- オープンソースで無料利用可能
- プラグインの追加で機能拡張が容易
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- 初心者には操作が難しい
- 日本語対応が不完全
EQとノイズ除去で音声明瞭化「AudioMass」

AudioMassを使用すると、グラフィカルなイコライザーで低音域をカットし、中高音域を持ち上げることでこもった音声をクリアにできます。またノイズリダクション機能も備えているため、背景ノイズの除去も同時に行えるのが便利です。
- 長所
- 短所
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- インストール不要で手軽に利用可能
- シンプルなインターフェースで初心者にも扱いやすい
- リアルタイムでの音声編集が可能
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- 高度な編集機能は限定的
- 日本語対応がない
定番の無料音声編集ソフト「Audacity」

Audacityで音質を上げるには、イコライザー機能を使って低音域(100-300Hz)を下げ、「Bass and Treble」エフェクトで高音を強調する方法が効果的です。また「Noise Reduction」機能でバックグラウンドノイズを除去し、さらに「Normalize」で音量を最適化することで、くぐもった声の音質を大幅に改善できます。
- 長所
- 短所
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- 多機能でありながら無料で利用可能
- 豊富なエフェクトやプラグインに対応
- クロスプラットフォームで利用可能
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- 操作に慣れるまで時間がかかる
- リアルタイム編集には対応していない
AIで簡単にこもり音を除去「MyEdit」

MyEditは特にAIベースの音質解析を行うため、こもった音の特性を自動的に判断し、最適な補正を提案してくれます。「Voice Clarity」機能を使うことで、くぐもった声を自然な明瞭さに変換できるのが魅力です。
- 長所
- 短所
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- AIによる自動ノイズ除去で手間が少ない
- インストール不要でブラウザから利用可能
- 無料プランがあり、手軽に試せる
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- 高度な編集機能は有料プラン限定
- 動画ファイルの直接編集には非対応
反響やこもり声も高精度に補正「iZotope RX」

iZotope RXの「De-mud」モジュールは、まさにこもった音をクリアにするために設計されています。また「Dialogue De-reverb」を使えば、録音環境の反響を効果的に除去し、音質を大幅に改善できます。プロの現場でも広く使われている信頼性の高いツールです。
- 長所
- 短所
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- 高精度なノイズ除去機能
- AIによる自動修復機能を搭載
- 業界標準の信頼性
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- 高価格である
- 初心者には操作が難しい
AIで声とノイズを自動分離「LALAL.AI Voice Cleaner」

LALAL.AI Voice Cleanerは特にこもった声を周囲のノイズから分離する能力に優れています。分離した後の音声は自動的に最適化され、音質改善に非常に効果的です。特に人の声を中心としたコンテンツに適しています。
- 長所
- 短所
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- 高精度な音声とノイズの分離
- シンプルな操作で利用可能
- 多様なファイル形式に対応
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- 無料プランでは処理時間やファイル数に制限あり
- 日本語対応が限定的
ノイズ調整付き動画編集ツール「Canva」

Canvaは動画編集が主目的ですが、内蔵の音声調整機能でこもった音をある程度改善できます。特に動画コンテンツを作成する際、別途音声編集ソフトを使わずに基本的な音質上げるための調整ができる点が魅力です。
- 長所
- 短所
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- 直感的なインターフェースで操作が簡単
- 動画と音声の同時編集が可能
- 豊富なテンプレートと素材が利用可能
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- 高度な音声編集機能は限定的
- 無料プランでは一部機能に制限あり
【AI×修復】破損したこもり音声も修復・補正「4DDiG File Repair」
録音中のトラブルやファイルの破損によって、音声ファイルが正常に再生できなくなることがあります。そんなときは、専用の修復ツールを使うことで、ファイルを復元できる可能性があります。
たとえば、「録音データが破損して声がこもってしまった」「ファイル自体が再生できない」といったケースでは、まず音声修復ソフトで修復を行い、その後に編集ツールで補正するという二段構えの対処がおすすめです。
4DDiG File Repairを起動します。左側のメニューバーの「ファイルの修復」タブをクリックします。次に、「音声修復」を選択します。
「ファイルを追加する」ボタンをクリックし、破損した音声ファイルを追加します。「すべてを修復」ボタンをクリックすると、プログラムは自動的にファイルを修復します。
音声ファイルの修復が完了すると、修復された音声ファイルをプレビューして、指定した場所に保存できます。
上記の操作でファイル修復に失敗した場合は、「高度な修復」機能を選択して、より深い修復を行うことも可能です。
最後に
くぐもった声やこもった音は、放置すれば大事な内容が伝わりにくくなります。しかし、今回紹介したようなアプリやサイトを活用すれば、録音ミスや音質の低下もすばやく改善できます。
特に音声ファイルを修復できるソフトを併用すれば、「編集すらできなかった音声」も再利用可能になり、作業効率が大幅に向上します。音声品質の改善で、よりクリアで伝わるコンテンツ制作を目指しましょう。